最強のピカチュウ

     最強のピカチュウ(後編)
手紙……?
僕に手紙を出してくれる人なんて…
しかも、朝に来たと言う事は、昨日の夜に書いた事になるよな…

僕は、その手紙を読んだ。
ヒトカゲからだったけど、その字には余裕がなくて、半分震えるような
手で書いた様な印象が読みとれた…

「僕の一番の友達、ピカチュウへ

 昨日は本当にごめん……
 でも、もう僕には君と一諸にいる資格はないよ…
 君に、本当に悲しい思いをさせてしまった。

 君は、僕にとってお兄ちゃんみたいな存在だった…
 歳だって3つ上だし、僕より強かったし…

 過去の楽しかった日の事は、いつまでも忘れない…
 今まで、本当に楽しかった…ありがとう…
  
                          ヒトカゲより」

僕は、顔が真っ青になった。
手が、体が、全身が震えた。

僕は、走り出した。

どこに行ったとも知れないヒトカゲを探しに…

「昨日の夜に出発したのなら、まだそう遠くへは行っていないはずだ…」

僕はそう思って、ヒトカゲを探し回った。
でも、それは甘かったんだ。

このあたりはどこまで行っても森だらけ、
あまり行動しない僕はこのあたりの地理を全く知らない。
探すどころか、自分がどこにいるのかも分からない…これじゃあ…

「ピカチュウさん!」

僕を呼ぶ声が聞こえた。
この間助けたメスのロコンだ。

「ピカチュウさん、どうしたの?そんなに慌てて。
 それに、あなたはこのあたりの地理に詳しくないはずでしょう?」

「うるさい!今はそれどころじゃないんだ!」

僕はどなった。
半分、やつあたりのような感覚だった。

その瞬間、僕はおもいっきり、ロコンに頬を叩かれた。

「もう!ピカチュウさん!
 あなたはいつもどうしてそうなの!?

 あなた一人だけじゃ、ヒトカゲさんは見つからないのよ?
 
 …あなたと昨日のヒトカゲさんの様子を見れば、
 大体の事は分かってくるわ。

 だから……、だから、こんな時にこそ、友達を頼りにするものでしょ!違う!?」

ロコンは、瞳に涙を浮かべて僕に訴えた。

僕は、付近を探してくれるように頼んだ。

ロコンが走っていった時、あのオニドリルが来た。

「おい、ピカチュウ、前はよくもやってくれたな…
 いや、今はそんな事どうでもいい。

 ピカチュウ、お前は、ヒトカゲとの思い出の場所にでも行ってみろ。
 飛んでくる時に見たが、ヒトカゲらしき姿は見あたらなかった。」

オニドリルはそれだけ言うと、どこかへ飛んでいった。

僕と、ヒトカゲとの思い出の場所……

あそこしかない…!


僕は、かすかな希望を持って、ある場所へ出かけた。

湖…それもとても綺麗で、水ポケモンの楽園の場所。

僕達は、ここで出会った。
水に落ちそうになっていたヒトカゲを助けたのがきっかけだった。


ヒトカゲは、悲しそうな顔をして湖のほとりに座っていた。

「ヒトカゲ……」

僕はヒトカゲの後ろに立って、そう言った。
綺麗な水が、僕の表情を映していた。

「ピカチュウ…ごめん。
 本当に、昨日は悪かった……

 人間に捕まって、にこにこしていた君が、嫌だったんだ…

 君も僕も、人間につけられた傷がある…

 僕より、君の傷の方がむしろひどい。
 なのに…、僕は…、僕は…」

ヒトカゲは、僕に抱きつき、泣いていた。
僕も一諸になって泣いた……


でも、もうこれで僕達はひとりぼっちじゃない…
ロコン。
オニドリル。
2人も友達ができた。

僕とヒトカゲの心の壁もほぼ無くなり、今では友達も多勢いる。


……そう、僕達には話し合える仲間がいるんだ…
悲しみも、苦しさも、楽しさも…

僕達は、ひとりじゃない。

そう、ひとりじゃないんだ!




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2003/02/01  Special Thanks to 白銀龍